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【ニュースレター】ジェット推進器の利点を活かした救難艇
開発のきっかけは東日本大震災
船舶の推進方法の一つであるウォータージェット推進とは、船底から吸い込んだ水を、後方に向けて勢いよく噴出することで推進力を得る方式です。当社では水上オートバイ「マリンジェット」の開発を通じ、30年以上にわたってこの技術を磨いてきました。
写真は、当社製の災害・警備活動用救難艇「RE1800」。全長5.80m、繊維強化プラスチックFRPとチューブを組み合わせた定員6名のリブボートに、「マリンジェット」で培ったジェット推進器を搭載しています。また、艇体は7つのブロックに分かれた特殊な構造を持ち、仮に障害物等との衝突によってボートが破損してしまっても浮力を確保できる仕組みになっています。
開発のきっかけは、東日本大震災による津波被害の救助活動でした。難航する救助活動の報道に接した「マリンジェット」の開発者が、「ジェット推進の技術は人命救助の現場に役立つのではないか」と発想したことが始まりです。
浅瀬や荒天下の救助活動でも高い走行性能を発揮
サミットの水上警備にも活躍
開発にあたって目指したのは、「救助の現場で機動力を発揮するボート」。小さな漁船が座礁してしまうような浅瀬でも小回りが効く機動性、万一転覆してしまってもボートを引き起こせばすぐに再始動が可能なことなど、「RE1800」にはジェット推進器の利点が存分に生かされています。また、船尾にプロペラのないジェット推進なら、ボートのどの方向からも要救助者を引き上げることが可能であり、さらに舷を低く設計できることから救助のヘリコプターの下降気流に対しても影響を受けにくいなど、救難艇として優れた特性を備えています。
こうして各地に配備された「RE1800」は、2017年に福岡県で発生した漁船転覆事故で落水者の救助で成果を挙げたほか、漁業に関わるパトロール活動等にも広く用いられています。また、災害・警備活動に特化した性能と機能を活かし、2016年のG7伊勢志摩サミットをはじめ、今年度の大阪G20サミットなどに採用され、各国要人が訪れる場でも周辺水上警備の機材として活躍しています。
主にマリンレジャーのシーンで高められてきた当社のジェット推進技術は、いま着実にその用途を拡げようとしています。
船尾には救助のためのライフスレッドを装備
災害・警備活動用救難艇「RE1800」
https://www.yamaha-motor.co.jp/marine/lineup/boat/re1800/
ボートと水上オートバイの長所をバランスさせた救難艇「RE1800」は、一般的な水上オートバイでは不可能だった複数人数の救助も可能。「救助を必要とする人だけでなく、救助を行う人を助けたいという気持ちで開発した」という開発者たちの言葉が印象的でした。 (広報グループ: 野本 拓見) |