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【ニュースレター】障がい者の自立を促す「指導員」という仕事
合理的配慮に基づく「手づくり治具」
「素直でまじめ、そして根気強い。同じ作業を高い集中力で繰り返すことは非常に得意です。その反面、判断や加減が必要な業務を不得意とする社員もおりますので、そうした部分を補うための合理的配慮が求められます」
こう話すのは当社の特例子会社、ヤマハモーターMIRAI(株)の相談員・鷺坂隆志さん。同社では現在、31名の知的障がい者と、3名の精神障がい者が働きながら自立をめざしています。
合理的配慮、とは――。「たとえば部品包装用のビニール袋にラベルシールを貼る作業では、『このあたり』とか『見本と同じように』という曖昧な指示は避けなくてはなりません。判断や加減を必要とせず、自分の力で業務を完遂させるための支援が必要です」。写真は、鷺坂さん手づくりの木製治具。透けたビニール袋ごしに正しいラベルシールの貼り位置が見えるよう工夫されています。この他にも各作業場には、鷺坂さんがアイデアを凝らしたさまざまな手づくり治具が並んでいます。
「大切なのは、観察する眼。作業のどこで困ってしまうのか、無駄な動きはないか、作業の工程をじっくり観察して、わかりやすく、やりやすい改善方法を考えていきます」
ヤマハモーターMIRAIの指導員、相談員の皆さん
一人ひとりを見極めて個別指導を実践
部品包装、清掃、事務と、業務内容によって3つに区分された作業グループには、それぞれ専任の担当指導員が配置されています。清掃グループの飯尾洋子さんもその一人。「主体的に人の役に立てる仕事に挑戦したい」と、3年前に総合病院の事務職から転身しました。
「当初はうまくいかないことばかり。しっかり観察して、適切な指導を心がけていましたが、無視されたり、反抗的な態度を取られたり」。経験を重ねる中でわかったことは、「私も観察されていたということです。『新米の指導員より、この職場では自分のほうがキャリアがある。プライドが許さない』というわけでした」。そこに気づいた飯尾さんは、関連会社で専門的な研修を受け、清掃の知識と技術を身に着けたそうです。
清掃時間を守れない社員には、「かかった時間と〇×をカレンダーにつけてみよう」と働きかけ、〇印が増える喜びで現在も記録を更新中。また、人見知りの社員には緊張をやわらげるためのアドバイス(名づけて「焼いも屋大作戦」)をしたり、モップの水加減が苦手な社員には、かわいいイラストで良い加減を表現するなど、個々の能力や個性を見極めながらきめ細かい指導方法を考え、実践しています。
「やれることが広がっていく。それが働くみんなの、そして私たち指導員にとっての大きな喜び。やりがいのある仕事です!」(飯尾さん)
テープ貼りの作業を補助する治具も
ヤマハモーターMIRAI(株)
https://www.yamaha-motor-mirai.co.jp/
相談員の鷺坂さんの前職は特別支援学校の先生。指導員の皆さんにとっても非常に心強い存在です。業務をサポートするさまざまなオリジナル治具は、すべて鷺坂さんの手づくりによるもの。「守るのではなく、自立を手助けするのが私たちの役割。そのために必要となるのが合理的配慮」。独自の視点で生み出すアイデアいっぱいの各種治具もその一環です。 (広報グループ: 岩崎 慎) |