Skip to main content

モビリティの変革を進めるLMW Yamaha Motor Monthly Newsletter (February 19, 2019 No. 69)

ニュース   •   2019年02月19日 16:00 JST

2018年12月、ヤマハ発動機は「ART for Human Possibilities」をスローガンとする長期ビジョンと、新たな中期経営計画を策定。「Advancing Robotics」「Rethinking Solution」「Transforming Mobility」という3つの注力領域で成長戦略に取り組む方針を明らかにしました。そのなかで、「Transforming Mobility(変革するモビリティ)」領域のひとつに挙げられたのが、ヤマハ独自のLMW(Leaning Multi Wheel)です。
今回は、大型スポーツモデル「NIKEN」発売に続き、イタリア・ミラノのEICMA 2018で300ccコミュータープロトタイプ「3CT」を出展するなど、積極的な製品開発でいっそうの発展・拡大をめざすLMWについてご紹介しましょう。

 

独自性:リーンするマルチホイール

 モーターサイクルは、車体を傾け(リーン)ながら旋回するワクワク感、爽快感が魅力の乗りものです。しかし、その陰には転倒という2輪ならではのリスクも潜んでおり、ヤマハ発動機は以前から楽しさとリスク低減を両立する技術の開発に取り組んできました。
 そのひとつが、1970年代半ばから始まった、安定感の高い3輪構成で車体をリーンさせる機構の研究です。モーターサイクルに馴染みのない女性や若年層の潜在需要を掘り起こすため、扱いやすく親しみやすい50ccスクーターの開発と平行してさまざまなアイデアが試され、製品には直結しなかったものの、豊富なデータと数多くの特許を取得。さらにその後も継続的に先行開発を重ね、2007年東京モーターショーには4輪でリーンしながら旋回できるスポーツタイプのマルチホイールビークル「Tesseract(テッセラクト)」を参考出品しています。

“ステップスルー”というスタイルを提唱した50ccスクーター「Passol」と平行して研究開発を進めていたフロント2輪のLMW試作車(1977年)

 そして、ついに長年の研究が実を結ぶ時がきました。きっかけとなったのは、欧州などで社会的な課題とされていた都市部の慢性的な交通渋滞を緩和する、クルマよりもはるかにコンパクトで、既存のモーターサイクルやスクーターとは異なる次世代のパーソナルモビリティを提案するプロジェクト。その企画段階で、改めてフロント2輪の有用性・可能性の大きさが評価され、製品化に向けた本格的な開発がスタートしました。
 その成果が、イタリア・ミラノのモーターサイクルショーEICMA 2013で発表された「Tricity(トリシティ)125」です。最大の特長は、フロントに左右2組のホイールと独立懸架サスペンションを備え、パラレログラムリンクという機構で車体と連結・同調させることにより、二輪車と同じようにリーンしながら軽快かつ安定した旋回を可能にしたこと。
 ヤマハでは、このリーンして旋回する3輪以上の車両をLeaning Multi Wheel=LMWと名付け、パラレログラムリンクを用いた緩衝・操舵システムによって軽快感と安定感の両立に貢献する技術をLMWテクノロジーと呼んでいます。

フロント2輪のLMW市販車第一号は2014年4月からタイ市場に導入した「Tricity125」。

 

利点:安心と快適、リーンする楽しさ

 2018年現在、LMWの製品ラインナップはスクータータイプの「Tricity125」と「Tricity155」、スポーツタイプの「NIKEN(ナイケン)」という3モデル。いずれもフロント2輪の3輪構成で、LMWとしての基本的な特長は共通しています。
 それでは具体的に、LMWはどのような場面でどういうメリットをライダーにもたらすのでしょうか。
 まず第一に挙げられるのは、やはり安定性。後輪を含む3輪で車体を支持しながら走行するため、発進直後や停止直前でもフラツキが少なく安心です。さらに、もともと1つの前輪が担う仕事や負担を左右2輪に分散・軽減するため、ブレーキの効力が高まり、制動距離が短くなります。

段差通過時、石畳・荒れた路面での走行時、コーナリング時、ブレーキング時など、LMWのメリットについてはYMCのwebサイト「技と術」で詳しく説明

 前輪の1つが濡れたマンホールや石畳、砂が浮いた路面でスリップしても、残る片側がグリップしていれば転倒を避けることができ、ギャップのある荒れた路面では左右の前輪が独立して追従するので、走破性が高く、快適性も高まります。
 また旋回している間でも、左右前輪がリーンに応じて良好なグリップを保つので、ライダーは安心してライディングを楽しむことができ、そのフィーリングはあくまでナチュラル。二輪車と比べても違和感のない軽快さ・快適さが、LMWならではの特長です。
 大型スポーツモデルの「NIKEN」では、ハイレベルな走行に備えてリーンする角度をより深く(45度)設定しているため、緩衝・操舵システムに、フロント内輪・外輪に生じる軌道のズレを修正するLMWアッカーマン・ジオメトリを採用し、スムーズな旋回性を実現しています。

スポーツLMWの第1弾として“リラックス&エキサイトメント”をテーマに開発を進めた「NIKEN」

 

未来:想像を超えてひろがる新モビリティ

 ヤマハの新しい中長期成長戦略で、LMWは「Transforming Mobility」の主軸として期待される製品群。EICMA 2018では「Tricity125/155」に続く300ccスクーターのプロトタイプ「3CT」を出展し、グローバル市場のボリュームゾーンに浸透を図る姿勢を示しましたが、今後は姿勢制御技術などの活用により、「安心・快適」と「楽しさ」を両立し新たな価値を提供する製品でお客さま拡大をめざします。
 ひとつの例としては、2017年東京モーターショーに参考出展したフロント2輪の小型電動立ち乗りモビリティ「TRITOWN(トリタウン)」や、二輪車から発想した前後2輪の4輪LMW「MWC-4」などが挙げられるでしょう。
 そのほかにも、ヤマハが持つエンジン・電動・電動アシストのさまざまなパワートレイン、あるいはオンロード・オフロード・スノーなどの多彩なフィールドをイメージしながら考えれば、新しいLMWの可能性は限りなく広がります。3年後、10年後、果たしてどんな新製品が生まれているでしょうか。
 イノベーションへの情熱を胸に、お客さまの期待を超える感動の創造に挑戦しつづける……。それが「感動創造企業」、ヤマハ発動機です。

今後、安心・快適、FUNを両立させたLMWを提供することでお客さまを拡大していく(12月に発表した長期ビジョンおよび新中期経営計画の資料より)

 

LMWテクノロジー実証動画2018

大型スポーツLMW「NIKEN」で行なったLMWテクノロジー実証実験の様子

 

Message from the Editor

 先日、米国ネバダ州ラスベガスにて開催されたコンシューマ・エレクトロニクス分野世界最大の見本市「CES 2019」の当社ブースでも、コンセプトモデル「TRITOWN」や「NIKEN」といったLMW機構の車両が、多いに注目を集めました。
 実は私も「トリシティ125」のユーザーで、街中の移動手段として愛用しています。実際にライディングして最初に感じることは、安心・安定感です。それによりラインディングに余裕ができることで、安全な運転につながっているような気がします。
 コーナーをリーンして(傾いて)走るというのも安定につながっているのではないでしょうか。走る乗り物だけでなく、人間や馬、犬、猫など、コーナーリングしているときよく見ると、みんな体がリーンしていますから……。

堀江直人

 

添付ファイル

PDF