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自動走行モビリティシステム Yamaha Motor Newsletter (June 7, 2018 No. 64)

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自動走行モビリティシステム Yamaha Motor Newsletter (June 7, 2018 No. 64)

モーターサイクルや船外機、産業用無人ヘリコプターなど、陸・海・空すべての領域に移動・輸送機器を展開しているヤマハ発動機は、独創的な発想や独自の技術、躍動感あるデザインを凝らしたモノ創りで、世界中の人々に歓びと豊かな生活を提供しようと努めています。
昨今、自動車産業や交通社会の大きな話題となっている“自動運転”“電動”モビリティについても、ゴルフカーの技術や知見を応用した独自のアプローチで、新しい近距離移動サービスシステムの実現をめざすPublic Personal Mobility(PPM)プロジェクトを推進。初参加した2018年1月のCES2018(アメリカ・ラスベガス)では、電動・低速自動走行車「06GEN Automated」を出展し、世界の注目を集めました。
今回は、そのYamaha PPMプロジェクトについて、概要と成り立ちをご紹介しましょう。

自動運転:目的は近距離移動サービス

 とある観光地の街角。私はスマートフォンで「Yamaha Public Personal Mobility」アプリを操作し、呼び出しボタンにタッチした。しばらく待っていると、4〜5人乗りの無人カートがやってきて、私たちの前で止まった。家族を促して乗り込み、シート脇に設置されたタブレット端末で目的地を指示する。その後はすべてクルマにおまかせだ。趣きのある街並みをゆっくり眺めながら、観光ガイドの音声に耳を傾け、写真や動画を撮ったりおしゃべりしているうちに、ほどなくクルマは予約したレストランに着いた……。
 これは、CES2018に出展した「Public Personal Mobility(PPM)06GEN Automated」が、一般市街地でどんな使われ方をするのか、その場面を想像して表現した一例です。
 ヤマハ発動機は、20年ほど前から、こうした観光地や郊外住宅地などの近距離エリア内で人の移動をより便利に、スムーズにする小型モビリティとして自社製品のゴルフカーに注目し、活用方法や効果、導入の問題点などについて研究・検証を重ねてきました。現在は、EM開発統括部のPPMプロジェクトが中心となってその活動を受け継ぎ、さまざまな移動サービスの企画・検討、必要な車両・装備や運用・管理システムの開発などに取り組んでいます。
 「06GEN Automated」も、そのなかで生まれた成果のひとつ。車体底面に取付けたカメラで路面の画像を読み取り、あらかじめ記録した路面画像と瞬時に照合することで自車位置と姿勢を精密に特定するVGL(Virtual Guide Line)や障害物を認識するための走行センサー(3D-LIDAR)を採用し、高精度な自動運転を可能にしました。さらにクラウド技術を利用した管制サーバ、Web-APIなどを組み合わせることで多彩な環境・用途に対応した移動サービスが低コストで構築できる、実現性の高いシステムとして提案。CES来場者やメディアの熱い注目を集めました。

「06GEN Automated」は路面画像認識によって自車位置を認識する仕組み

ゴルフカー:コミューターの適性と自動運転の実績

 ヤマハがゴルフカーの製造・販売を開始したのは1975年。ガソリンエンジンの粘り強い駆動力で人気を高め、その後、電気モーター搭載の電動モデル、1996年には電磁誘導式の自動運転モデルをラインナップ。また各種レジャー施設や公園向けにも特別装備を施したランドカーとして導入をはかり、事業の幅を広げてきました。
 電磁誘導式の自動運転とは、走行するコースに電線や磁石を敷設し、クルマが磁力センサーで磁界の変化を読み取りながらハンドル操作、停止を自動で行うしくみ。速度調整もクルマが速度センサーを通じて行い、乗客は発進時にボタンを押すだけ。非常にシンプルで信頼性が高いのが特長で、現在も日本のゴルフ場を中心に広く普及しています。
 その一方、観光地や郊外住宅地などの近距離エリアで活用できるモビリティを研究していた開発グループは、高齢者や障がいのある人でも乗り降りしやすい低床な車体、オープンで見晴らしのよいキャビン、環境にやさしく低コストな電動、走行速度20km前後の必要十分な性能、電磁誘導で自動走行が可能なことなど、近距離コミューターとしても優れた適性を備えるゴルフカーに着目。ビジネスの拡大をはかりたい事業部と協力しながら、新しい移動システムの企画・提案に向けてさまざまな取り組みを進めてきました。

オランダ国際花博(2002年)で自動走行シャトルサービスとして使用されたゴルフカー

 例えば2002年、オランダの国際花博「Floriade 2002」で来場者を会場内の展望台に案内する移動サービスの依頼を受け、電磁誘導式ゴルフカーをベースとした運転席のない特別仕様の5人乗りカートを導入。人が立ち入らない往復1.5kmの専用コースで25台を自動走行させ、延べ40万人に利用されました。
 「その後、東京大学の研究室と連携し、千葉県柏市のマンションが立ち並ぶ街路に500mの直線コースと3ヵ所の乗り場を設け、道行く人たちに車両の呼び出しから行き先の指定、自動走行まで体験してもらう実験を行いました。ここでは補助員がクルマに付き添い、歩くような速度ですが、人や自転車などが混在するなかを走行し、貴重なデータを得ることができました」と、EM開発統括部長。
 しかしその間にも日本では、少子高齢化や財政難によってバスや鉄道が維持できず、買い物や病院など日常の移動が困難になったり、せっかく観光資源が豊富なのに交通が不便で観光客が激減するといった地域が増加していました。そこで石川県輪島市では、地元商工会議所が“エコカート”と名付けた電動ランドカーで一定ルートを巡回する新交通システムを立案し、マニュアル運転による独自の実証実験を開始したのです。
 その活動にヤマハも協力し、2014年、一般公道を走行できる軽自動車として認可を取得。続いて電磁誘導式の自動走行実験にも着手し、一般交通への導入に向けて大きな一歩を記しました。

信頼性:社会実装めざしハードとソフトを磨く

 輪島市での取り組みは日本のメディアで数多く取り上げられ、また自動車業界でも自動運転が世界的な話題として盛り上がりを見せたことから、日本政府も自動走行の社会実装に向けて「自動走行に係る官民協議会」を設立し、国土交通省、経済産業省を中心に2つのプロジェクトをスタートさせました。ひとつは、過疎地や交通弱者支援などのため、鉄道やバスなど基幹交通網と目的地を結ぶ近距離モビリティに、走行経路が定められた公共的利用の自動走行サービスを導入する実証実験。もうひとつは、高齢化が深刻な中山間地で人の移動や物流を確保するため、「道の駅」と呼ばれる地域交流施設を拠点とした自動走行サービスの実現に向けた実証実験です。
 そこに大手自動車メーカーの参加はありませんが、ヤマハはそれぞれの依頼を受けて、仕様が異なる電磁誘導式ゴルフカーをベースにした自動走行車両を提供し、実験データのフィードバックを受けています。
 「私たちがめざしているのは、近距離移動サービスを行う事業者に対して、電動の自動走行車両とそれを運用・管理するソフトウェアをパッケージにして提供するシステムサプライヤーです。それは、自動車メーカーが取り組んでいるような大がかりなものではなく、もっと現実的で生活や人に密着した、地方の自治体でも導入に手が届くシステム。
 現在の電動ゴルフカー、電磁誘導の技術は、低コストで近距離の移動サービスに適した性能・機能を備えていますが、06GEN Automatedに搭載したVGLを使えば、走行ルートをもっと簡単に変更したり増やしたりできるようになる。また歩行者や障害物を探知するため、06GEN AutomatedではLIDARを使っていますが、「道の駅」の実証用車両では独自のステレオカメラを採用しています。
 今後の大きな課題は、交通社会に実装できる信頼性を確保すること。ゴルフ場のような施設内では想定できない、歩行者や他車との関係、季候・天候・地形といった自然環境、経年変化などに起因する現象をさまざまな実証実験の積み重ねによって抽出し、技術的な解決策を探っています」(EM開発統括部長)
 そして、地域の環境や事業者の要望に応じた最適な移動サービスを提案するために、必要な信頼性の高い技術を数多く引き出しに確保しておく……。PPMプロジェクトは、来たるべき実現の時に向けて一歩ずつ足元を踏み固め、着実に歩み続けているのです。

日本で初めてとなる一般公道での遠隔式自動運転実証実験の取り組みに活用されている当社の電動小型低速車両

移動サービスシステムの実験走行映像 (YouTube)

技術紹介サイト: 低速自動走行車による移動サービスシステムより

Message from the Editor

 ゴルフが大好きな私は、かなり前からゴルフカーを国内外で利用し、熟知していると思っていましたし、これが街の中の自動運転に繋がるとは正直想像していませんでした。自動運転というと自動車メーカーの大掛かりな取り組みのイメージが強いですが、実は身近な自分の会社の技術が、既に次の社会を作っていくキー技術になっていたとは! 決して派手ではありませんが、着実に未来に向けて進んでいます。

堀江直人

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ヤマハ発動機グループは、「世界の人々に新たな感動と豊かな生活を提供する」ことを目的に、人々の夢を知恵と情熱で実現し、つねに「次の感動」を期待される企業、”感動創造企業“をめざします。

ヤマハ発動機は、パワートレイン技術、車体艇体技術、制御技術、生産技術を核とし、二輪車や電動アシスト自転車などのランドモビリティ事業、ボート、船外機等のマリン事業、サーフェスマウンターやドローンなどのロボティクス事業など多軸に事業を展開、世界30 ヶ国・地域のグループ140社で開発・生産・販売活動を行い、企業目的である「感動創造企業」の実現に取り組んでいます。今や、当社製品は180 を超える国・地域のお客さまに提供され、連結売上高の約9 割を海外で占めています。http://global.yamaha-motor.com/jp/

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