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復元作業によって蘇った夢の水中翼船
復元作業によって蘇った夢の水中翼船

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【ニュースレター】30年を経て湖上に蘇った夢の「水中翼船」

若い技術者たちに乗ってほしい

 全長4.8メートル。流線型のキャノピーに覆われた特徴的なスタイリング。それはまるで、かつて子どもの頃に夢見た未来の乗り物のようです。湖上に浮いたその乗り物が加速していくと、徐々に浮き上がり、二本の脚だけで立ち上がって滑走をはじめます。
 見るからに楽しげなこの乗り物の名は「OU-32」。ヤマハのボート事業の立ち上げ(1960年)からボートの開発・設計に関わり続けた故・堀内浩太郎氏をリーダーとする「堀内研究室」で試作され、1988年の「東京国際ボートショー」に“夢のボート”として出展した水中翼船です。
 「工場の倉庫を整理しているときこの水中翼船の実物が出てきたんです。ぜひ修復してもう一度走らせてみたいと思いました」
 こう語るのは、還暦過ぎの実験担当者を中心としたベテラン社員の面々(マリン事業本部ボート開発部)。
 「ボートの“快適性向上”をテーマに過去の水中翼船を復元し研究することで、水上を走る乗り物の、乗り心地の向上、燃費の大幅な改善、ボートに乗ることの新たな悦びの提供につなげていくことが目的となっていますが、白状するとそれらは後づけなんです。これを実際に倉庫で見たとき、ぜひ乗ってみたいと思った。そしてボートの開発に携わる若い社員たちにも乗って欲しかった。それが本当の動機ですね(笑)」

ジェット噴射による推進力を得ると水中翼によって船体が浮上する

 

自由闊達なものづくりの思想と遊び心

 水漏れの修復、シートレイアウトの変更、エンジンの換装など、残っていた一枚の図面を元にレストアに要した期間は約2か月間。実際に乗ってみて、操船には相当の技術を要することを改めて熟練操船者である皆さんも身をもって体験しました。
 「独創的で操船の難しいフネだからこそ、余計に乗りこなしたいと思う。そういうのってあるじゃないですか。堀内さんと一緒に仕事をしたことはないのですが、レストアして、実際に乗って、堀内研究室の自由闊達なものづくりの思想、その遊び心がひしひしと伝わってきました。堀内さんたちはこの乗り物の商品化を夢見ていたようですが、時代が異なれば商品化に向けた何かしらのアプローチがあったかもしれない」
 今でこそセーリングボートにボードセーリング、カイトセーリングなど、さまざまなウォータースポーツにおいてフォイリング(翼走)が当たり前のように見受けられますが、それを30年前に具現化しようとした発想とチャレンジ精神は、真に“先見の明”といえそうです。翼走させることやその状態での旋回など、操船は決して容易ではないものの、何度も「運転したい!」と思わせる感動体験がそこにはありました。

夢の水中翼船は、ボート開発部5名の手によって復元された

 

これまで書籍でしか見たことがなかった「OU-32」の走行シーンはとても興味深く、今の時代であっても新鮮な印象を受けました。そして「酔狂」といえなくもない「OU-32」の復元に取り組んだボート開発部の人たちと、当時と変わらぬ彼らの「遊び心」にはワクワクさせられました。

(広報グループ: 野本 拓見)

 

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