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実証実験が進む「TRITOWN」 Yamaha Motor Newsletter (July 30, 2019  No. 73)

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実証実験が進む「TRITOWN」 Yamaha Motor Newsletter (July 30, 2019 No. 73)

2017年秋の東京モーターショーで、手招きに応じて自立し無人で低速走行する「MOTOROiD」や無改造のYZF-R1Mでサーキット走行を行なう自律ライディングロボット「MOTOBOT Ver.2」などが話題を集めるなか、LMW(Leaning Multi Wheel)技術を応用したコンセプトモデルのひとつとして登場。ステージ上をすいすいと軽快に駆け抜け、来場者の視線を釘付けにしたのが、小型電動立ち乗りモビリティ「TRITOWN」です。
それからおよそ1年半、その実用化に向けた実証実験が日本でスタートしました。2030年長期ビジョンのひとつ「モビリティの変革(Transforming Mobility)」に向けた、ヤマハ発動機の新しい取り組みをご紹介しましょう。

 

キャラクター:極低速コミューターとアクティブスポーツを両立

 LMW(Leaning Multi Wheel)機構によるフロント2輪と電動モーター内蔵のリア1輪、リチウムイオンバッテリーを搭載するフレームで構成された「TRITOWN」の車体は、車重約40kg、全長1m強の軽量・コンパクトなサイズ。前/後ブレーキレバー、アクセルレバーなどを備えたハンドルと車体左右のフットボードがLMW機構にリンクしており、利用者はフットボートに立って両足でバランスを取りながらハンドルを操作し、アクセルとブレーキで速度をコントロールします。
 こう言葉で表現すると、なんだか難しい乗り物のように感じるかもしれませんが、慣れが必要なのは最初だけ。まずハンドルポストに付いているレバーでLMW機構のリーンする(傾く)動きをロックし、ハンドルとブレーキレバーを両手で持ったまま片足ずつ乗り込み、自然に立ってさえいれば、LMW機構のロックを外してもふらつくことなく直立・静止することができます。ハンドルを支えるのに力を入れる必要はなく、身体のバランスを意識することもありません。
 その状態で両手のブレーキを放し、右手親指でアクセルレバーを押せば、そのまま前進。カーブするときは、自転車と同じようにハンドルを操作して車体を傾ければ、フロント2輪とハンドル、フットボードが連動して傾き、安定してスムーズに曲がることができます。また、左右のフロント二輪が独立して動くLMW機構を活かし、デコボコや段差のある路面、傾斜地を走行できることも特長のひとつです。

 最高速度は25km/hの設定ですが、静止して自立できる「TRITOWN」は、自転車なら押して歩くしかない極低速でも安定した走行が可能。さらに電動なので匂いや騒音がなく、歩行者と一緒に散歩を楽しむこともできます。その一方、小回りが利くコンパクトな車体とLMWならではの安定したハンドリング、走破性の高さを活かし、 東京モーターショーのステージで見せたような軽快、アクティブな走行が楽しめる性能も備えています。
 この2つのキャラクターを、ミニマムサイズの車体と環境に優しい電動で両立したことが「TRITOWN」の大きな魅力といえるでしょう。

 

技術:電子制御を使わず静止・自立できるLMW

 一般的なフロント2輪の車両(三輪車、四輪車)は、二輪車のように車体を傾けて曲がることができませんが、停車しても倒れずに静止することができます。その一方、TRICITYやNIKENなどのLMWは左右のフロント2輪が独立して動き、車体とともにリーンする構造なので、停車するとライダーが支えなければ倒れてしまいます。
 そこで、TRICITY125の開発に携わっていた数名のスタッフは、電子制御装置を使わず、人間が立って両足でバランスをとる能力を利用してLMWを自立・静止させる機構を研究していました。それを立ち乗り型近距離コミューターに盛り込み、社内のアイデアコンテストに出品したところ、社長賞と金賞を獲得したのです。
 そして2016年、正式な開発プロジェクトが発足し、最初のプロトタイプを制作。それがさらに高い評価を得て、2017年の東京モーターショー出展につながりました。
 「もともとヤマハは、従来のモビリティの概念にとらわれず、新しいもの、社会や環境に貢献するものに挑戦してきました。電動アシスト自転車PASや電動スクーターPassol、e-VINO、LMWのTRICITYもそうです。TRITOWNが最初にアイデアコンテストで認められ、製品化をめざすプロジェクトに発展したのは、アイデアのおもしろさだけでなく、電動であること、省スペースであること、LMW技術の広がりなどが複合的に評価された結果だと思います」(TRITOWN開発プロジェクト・企画担当者)。

第45回東京モーターショー 2017にて参考出展車として披露されたTRITOWN

 

実証:製品性とユーザー像のすり合わせ

 東京モーターショーで、その名とスマートな走行性をアピールした「TRITOWN」の次なるステップは、一般のお客さまに乗ってもらうこと。それには安全性や耐久性はもちろん、量産化を前提とした最適化などクリアしなければならない問題がたくさんありました。
 「そこで、モーターショーモデルの基本構成だけを踏襲し、すべて設計し直したんです。ホイールやタイヤ、ブレーキパーツなどに、調達しやすい自転車用部品を使っていることもそのひとつ」と話すのは、車体設計の責任者。そうした見直しのなかで、例えばシートを持たない立ち乗りスタイルも検討課題になりました。
 「アイデアコンテストに出品した時のコンセプトが、寮から会社まで、坂の上り下りがある1kmほどの道のりを、自転車より楽に、軽快に走れる乗り物でした。シートをつければターゲットユーザーは広がるでしょうが、自立機能と素直なハンドリングがスポイルされる可能性もあります。そのため、まずキープコンセプトで製品の完成度を高めることを優先しました」
 それが冒頭にご紹介した仕様の実証実験用モデルです。まず2019年1月のCES(アメリカ)にプロトタイプを出展し、デモ走行を披露。その後4月末から1ヵ月間、日本のヤマハ発動機本社に近いリゾート施設で16歳以上70歳以下を対象に実証実験を行い、初めて一般のお客さまに試乗していただきました。
 「試乗時間はひとり1時間(有料)。最初に基本的な説明と走行練習を10〜15分ほど行って、あとは指定の走行エリア内を自由に試乗してもらったのですが、ほとんどの方が時間いっぱいまで楽しんでいました。そのおかげで、いろいろなご意見やデータをたくさん収集することができ、例えば男性は製品や性能、乗り味にコメントが集中するのに対し、女性はどのように気持ち良かったか、風景がどう見えたかといった情感的なコメントが多いことがわかったんです。これはまさに狙いどおり、TRITOWNが持つキャラクターの二面性にぴったり符合すると、今後の活動に自信が持てました」(開発プロジェクト・企画担当者)
 実証実験の2回目は7月半ばから8月半ばまで、場所を新潟県長岡市の緑豊かな丘陵地にある国営公園に移し、園内を約1時間かけて巡るガイドツアー形式(有料)で行います。「アクティブな走行に適した環境の1回目に対し、2回目は自然の風景や風の心地よさ、同行者とのコミュニケーションを楽しめる環境。それによって、お客さまの反応はどう変わるのか。製品性だけでなく、イベント運営のノウハウなども含めて幅広い情報収集ができると期待しています」
 こうした施設内で利用することを前提とすれば、想像以上に早く、製品化が実現するかもしれません。

左から2017年の東京モーターショー出展モデル、コンシューマ・エレクトロニクス分野における世界最大の見本市「CES 2019」に出展モデル、そして一般のお客さまに試乗いただいている2019年実証実験モデル

 

さあ、TRITOWNでいこう。

2019年実証実験モデルを使ったTRITOWNの走行シーン
https://youtu.be/haoTcYLkmCQ

 

Message from the Editor

私も実際に実証実験の時にTRITOWNを試乗しましたが、素直に楽しい乗り物です。2輪、3輪、4輪とモビリティの世界は広がっています。今後いろいろな環境・場面でいろいろな人たちにこれらの乗り物が活用されると思うとワクワクしてきます。TRITOWNは今後も日本の各地で実証実験を予定しておりますので、ぜひ、機会があれば試乗してみてください。

堀江直人

 

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