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システムサプライヤーとして飛躍をはかるヤマハマリン事業 Yamaha Motor Monthly Newsletter(Sep.15, 2017 No.57)

ニュース   •   2017年09月15日 15:00 JST

1960年、ヤマハ発動機は、モーターサイクルに続いてFRPボート、船外機の製造・販売を開始。多種多彩な製品開発と積極的な普及活動で日本国内トップのマリン総合メーカーとなり、グローバル市場においても、優れた信頼性と幅広い製品ラインナップをそろえた船外機で大きく躍進。着々と業績を拡大したマリン部門は、2015年、ヤマハ第二の基幹事業として全体の約20%にあたる年間3,000億円以上の売上げを達成しました。
そこで今回は、2016-18年中期計画で「世界3兆円市場への挑戦」を掲げ、さらなる成長をめざすマリン事業の取り組みについてご紹介します。

成長戦略のキーポイント:大型船外機
 現在、ヤマハマリン事業の基盤であり、年間売上げ約3,000億円の56%を占めているのが船外機。2016年の世界需要は年間71.7万台で、ヤマハは41%にあたる29.2万台を出荷しました。その最大市場・北米で、リーマンショック後、急速な需要回復を見せているのが100馬力を超えるクラスの製品。この勢いは欧州やオセアニアにも飛び火し、世界の市場を押し上げています。
 「25馬力以下を小型、30〜90馬力を中型、100馬力以上を大型とすると、2010年頃まで3分の1ずつの割合だった当社の販売台数も、いまや半数が大型船外機です」と、マリン事業統括部長。「ボートは推進機の種類によってスターンドライブ艇、インボード艇、船外機艇に分けられますが、従来大型ボートに多かったインボード艇が減り、船外機艇に移行してきたことが大きく影響していると考えています」
 インボードエンジンの多くはディーゼルで、トルクが大きいものの船速が遅く、船内にエンジンを収納するため船室が狭く、臭いや振動などが気になることがある。またエンジンが壊れた場合、修理に時間や手間がかかるなどのデメリットがありました。
 一方、船外機は艇体の外に懸架するためスペース効率がよく、メンテナンスや載せ替えもしやすいなどが利点ですが、1980年代以降北米や欧州の排出ガス規制が厳しさを増し、大型ボートに適した高出力モデルはなかなか登場しませんでした。
 そこでヤマハは、従来の2ストローク船外機に代わる4ストロークモデルのラインナップ充実をはかるなか、2000年頃からは大排気量・高出力モデルの開発に注力。V型8気筒エンジン搭載の350、300馬力シリーズやV型6気筒の300、250、225馬力シリーズなどを次々と発売し、それぞれ高い評価を獲得しました。
 こうした製品戦略が功を奏し、ヤマハは大型ボートの船外機化と船外機市場の活性化を促したのです。

 

北米を中心に、大型の船外機を複数搭載するよう設計されたボートが人気を博している

情報・操作系を統合:システムサプライヤー
 インボードから船外機へ。推進機の変化は、近年、大型ボートのありようやユーザーのライフスタイルまでも変えていきました。
 船内で寝泊まりできるキャビンを備えた従来の外洋クルーザーは急速に影を潜め、現在トレンドを牽引しているのは、300馬力や350馬力船外機を3基掛け、4基掛けした高速ボート。圧倒的なパワーを活かして目的のエリアへ移動し、フィッシングやクルージングを楽しんだ後、その日のうちに上陸してホテルや別荘で夜を過ごす。そんな遊び方が広がり、艇体の設計や艤装もそれに適したものに変わったのです。
 しかし、艇体が大型になるほど、また船外機が2基、3基と増えるにしたがって操船には技術が必要となり、特に離着岸の微妙な操船は熟練者にとっても簡単ではありません。
  「それをなんとか解決したいということで、ボルボ・ペンタ社と共同開発したのがヘルムマスター(2013年発売)です。複数ある船外機のシフト操作やスロットル開度、ステアリング操作などを統合的に電子制御し、真横移動やその場旋回などもジョイスティック1本で、直感的に操船できるのがメリット。このおかげで、大型船外機ボートの需要をしっかり確保できました。そこで、こうしたシステムをさらに充実・発展させ、自動車のように多機能で操船が容易な、信頼性の高いパッケージボートを作ろうというのが、ヤマハのシステムサプライヤー戦略です」(マリン事業統括部長)。
 ボートはもともとローカル色の強い商品。その土地、その土地の環境や用途に最適な形状の艇体、必要な艤装を、地元のボートビルダーが独自のノウハウで提供してきました。それはボートが大型化し、さまざまな航海機器、操船デバイスが使われるようになっても変わりません。
 「しかし、それぞれ独立した操作系のエンジンや装置をそのまま組み合わせて搭載するだけでは、船内がスイッチだらけ、メーターだらけになってしまいます。これでは使いづらくてしょうがない。ヤマハがめざしているのは、レーダーやGPS、ソナー、カメラなどの情報を一括管理・表示するシステムを作ること。エンジンや操舵装置、さまざまな補助装置を連動させ、リモコンレバーひとつ、ステアリングひとつで統合制御する操船システムを作ること。そしてそれらを、ヤマハならではの高い精度と信頼性を備えたパッケージに仕上げ、より多くのボートビルダーに販売することです」

熟練を要する複数の船外機操作をスティック1本で可能にした統合制御システム「ヘルムマスター」


多機能を扱いやすく:技術開発
 大型になればなるほど増えていく機器・装置の数々を、ひとつのシステムに連動させ、気軽で扱いやすく快適な操船環境を提供する。それがボートユーザーにとって、どれほど喜ばしいことか。ヤマハはそこから発想し、その視点を持ち続けています。
 取り組みはまだ途上ですが、ベースとなる大型船外機はすでに市場で高く評価されており、製品開発、販売ともに順調。操船制御の中核を担うヘルムマスターも、GPSとの連動で定点保持機能が追加され、さらに利便性を高めました。またヘルムマスターや船外機の情報、GPSやレーダーなど周辺機器の情報まで幅広く表示するタッチスクリーン式の多機能ディスプレイ「CL7」を2017年春に発売するなど、着々と進捗を続けています。
 「それに加えて2017年夏、2つの周辺機器メーカーを取得しました。ひとつは燃料マネジメントを行う技術、もうひとつは艇体に取り付けて航走中の姿勢制御を行うトリムタブの技術を持った会社です。トリムタブは、ボートがもっとも安定する滑走(プレーニング)状態をいち早く作り出す装置で、快適性や燃費の向上に貢献します。それらをエンジンと連動させ、操船システムの機能をいっそう高めるのが狙い。具体的な開発はこれからですが、システムに必要な要素はほぼそろいました。完成のメドがつくのも間もなくでしょう。世界中のボートビルダーが採用しやすい、汎用性の高いシステムにつくりあげ、より多くの人々にマリンライフを楽しんでもらいたいですね」(マリン事業統括部長)。
 多基掛け大型ボートを、まるでスクーターのように悠々と、自由自在に走らせる。そんな光景があちこちで見られる日は、そう遠くないようです。

複数のメーターやモニターをシンプルにまとめたタッチスクリーンカラーディスプレイ「CL7」

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