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企業理念を体現する「アフリカ事業」 Yamaha Motor Newsletter (August 30, 2019 No. 74)

ニュース   •   2019年08月30日 13:00 JST

2019年8月下旬、日本・横浜市でアフリカの開発をテーマとする国際会議「TICAD 7」が開催されました。ヤマハ発動機は、およそ半世紀も前からアフリカ市場の可能性に注目し、現地に根ざした地道な事業活動を継続。今後に向けても、中・長期経営計画に基づきながら幅広い製品分野で新たな事業戦略を構築し、「2030年までに200億円規模の売り上げをめざす」(日髙社長)としています。
今回は、こうしたアフリカにおけるこれまでの足跡と、新しい取り組みについてご紹介しましょう。

 

足跡:きっかけは船外機

 世界の陸地面積の約23%にあたる約3,000万km2の大陸と島々に、54ヵ国、約12億3,000万の人々が生活しているアフリカ。現在はまだ発展途上のエリアですが、ODA(Official Development Assistance)や豊富な鉱物資源などを背景にした企業投資によって、着実に歩みを進めつつあります。例えば北部アフリカ以外のいわゆるサブサハラ全体で、2008年〜17年の平均経済成長率は高所得国の3倍以上にあたる3.74%を記録。一人あたりのGDPも、2000年〜18年の約20年で2.6倍に伸びています。2050年にはアフリカ全体の人口が20億を超えると予測されており、このまま順調に成長を続ければ、さまざまな消費財の巨大な市場になると大きな期待が集まっています。
 ヤマハ発動機は、こうした世界の流れに先駆けて、アフリカ市場開拓に着手した企業のひとつです。1955年、日本でモーターサイクルメーカーとして創立したヤマハは、1958年、メキシコに最初の拠点を置いて海外進出の足がかりを構築。その後、船外機やFRPボート、スノーモビル、ATV、汎用エンジンなど多彩な製品を開発して事業の多軸化を進めながら、アメリカ、ヨーロッパ、中・南米、東南アジアなど幅広いエリアに販路を拡大していきました。
 アフリカに初めてアプローチしたのは1970年頃。欧米メーカーが進出していなかった船外機の業務需要に狙いを絞り、営業マンが単身で村々を回って木造ボートへの取り付け方法を工夫したり、効率のよい日本の漁法を紹介しながら、漁業、河川の交通・運搬に使われていた木造・手こぎボートの動力化をめざしたのです。
 「どうすれば売れるだろうか、もっと喜んでもらえるだろうか。いろいろとやるべきことを考えて工夫した結果、ひとつの浜辺がヤマハの船外機でいっぱいになる。たくさんの人々が笑顔で、ヤマハすごいよと言ってくれる。その達成感というか、充実感が一番のモチベーションでした」と話すのは、1970年代後半からアフリカを担当してきたベテラン営業マン。地域ごとに異なる使用実態や燃料の質などを調査して製品開発にフィードバックし、あるいは地元のサービスマンたちと密接な協力関係を築き、ハードとソフトの両面でユーザーをサポートする。そのビジネススタイルを貫くことで、ヤマハ船外機はアフリカでナンバーワンのシェアを獲得したのです。

アフリカで、YAMAHAの名を不動のものにしたのは、1975年から投入した船外機「Enduro」シリーズ。その優れた耐久性で現在も高い信頼を得ている

 

現状:多彩な製品とサービスで社会的課題に取り組む

 現在、アフリカにおけるヤマハの事業は、途上国の発展と福祉の向上に継続的に協力することを目的とする海外市場開拓事業部(OMDO=Overseas Market Development Operations)が統括。52ヵ国・59の特約店を通じて、船外機やモーターサイクルをはじめすべての商材の販売・メンテナンスなどを行っています。
 この販売網の基盤を成しているのは、販売(Sales)・アフターサービス(Service)・補修部品の供給(Spare parts)という「3S」の充実。特に、お客さまの安心とヤマハブランドの信頼性を左右するサービス技術については、世界基準の一貫教育カリキュラム「YTA=YAMAHA Technical Academy」による研修を行って特約店メカニックを養成し、彼らから村々のプライベートメカニックへと技能を伝えるシステムを構築しています。
 その一方、日本国政府や現地の各国政府、国連などの国際機関、NGOなどと連携し、さまざまな社会的課題に取り組む事案も増えています。例えば漁業の近代化。船外機による動力化だけでなく、従来の木造ボートを耐久性・強度・安定性に優れたFRPボートに置き換えることで航行中の事故を減らし、また獲った魚をスピーディに水揚げすることで鮮度・品質を高め、収入増につなげようというものです。
 そのためケニアやモザンビーク、モーリタニアでは、ヤマハがFRP成形の型を提供し、技術者育成などを行って技術援助工場を設立。2019年には特約店と協働のパイロット工場がセネガルで生産を開始しています。

製品の提供のみならず、船外機やFRPボートのメンテナンスや技術講習会などのサポートも定期的に実施。サービスメカニックの育成も行なっている

 また、サブサハラでは2.7億人が安全な水を利用できないとわれていますが、その環境改善に貢献しているのがクリーンウォーター事業です。緩速ろ過という自然の力を利用した「ヤマハクリーンウォーターシステム」は、1基で1日8,000L(約400世帯)の浄水を提供することが可能。しかも大きな電力や定期的な薬剤添加・部品交換が不要で、メンテナンスも容易なため、村人だけで永続的に管理・運用できます。そのため2019年6月現在、アフリカ全体で21基が設置され、導入先からきれいな水によって健康状態が改善した、余った水を近隣に販売するなど新しいビジネスが生まれた、水汲み作業から解放された子どもたちが学校へ行く時間ができたなどの効果が報告されており、今後、マダガスカルやエチオピアにも6基設置される予定です。

「緩速ろ過」という砂、砂利、水中のバクテリアなど自然界の水浄化機能をベースにしたシンプルな構造の「ヤマハクリーンウォーターシステム」。2019年にはセネガルで10基の設置を完了し、さらにマダガスカル5基、エチオピア1基の設置を予定している

 

展望:交通・運輸の新ビジネスにチャレンジ

 冒頭でご紹介したように、急速な近代化を遂げつつあるアフリカ。例えばサブサハラでは携帯電話の普及率が70%を超え(2017年現在)、モバイルバンキングの取引量も2013年から6年で4倍以上に拡大しており、Eコマースの利用が急速に進んでいます。しかしながら、交通インフラの整備が大きく遅れているため、人々が求めるスムーズな物流を実現するには至らず、その課題をIT技術で解決しようとする起業家も増えてきました。
 そこでヤマハは、バイクデリバリーやバイクタクシーにIT技術を活かし、ルートの誘導やライダーの管理ができるスタートアップ企業と連携。その事業拡大をはかることで社会的な物流・交通ニーズに応え、多くの人たちに雇用を提供するとともに、ライダーデータを活用したバイク購入ファイナンスの新しい仕組みを提供したいと考えています。
 そのための第一歩として、まずウガンダのCourieMate(WBPF Consultants Limited社)と連携してデリバリー事業の拡大に努め、その後、ケニアやタンザニアでも複数の企業と同様の事業を展開していく計画です。さらにナイジェリアでは、地方都市を中心にタクシー業、物流業を展開しているMAX社に投資し、同社が得意とするエリアでヤマハ製品のマーケティングを行います。

個人所有が少ない二輪車をバイクタクシーやデリバリー事業といったビジネスで使ってもらいながら、ファイナンス体系の構築やユーザーニーズのモデルへの反映などを行い、将来的には個人への車両販売に結びつけていく

 またモーターサイクル以外の分野では、ケニアの航空貨物を取り扱う企業と連携し、産業用無人ヘリコプター/マルチローターを活用したエアサービス事業にも着手する予定です。
 半世紀の時間をかけて、実績のある製品と技術でアフリカの人々に感動と豊かさを提供してきたヤマハの、次代に向けた新しい飛躍にご注目ください。

農業や防災の用途などケニアの貨物運航会社と連携し、無人航空機によるエアサービス事業の立ち上げを計画

 

アフリカでの活動紹介動画

セネガルでのヤマハクリーンウォーターシステム
設置模様
https://global.yamaha-motor.com/jp/showroom/movingyou/012/

モーリタニアの造船工場の様子
https://global.yamaha-motor.com/jp/showroom/movingyou/007/

 

Message from the Editor

  「アフリカ出張には蚊取り線香が欠かせないんだけど、冬場は売ってないんだよね〜。だから冬場の出張のために夏に蚊取り線香を買い貯めしてたよ(笑)」
 モーターサイクルの海外事業部に在籍していた若い頃、歴代の上司はアフリカ担当経験者が多く、こんな話をよく聞かされました。先輩の方々のいろいろな苦労があって、50年近くアフリカのビジネスが続いています。

堀江直人

 

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