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2025 FIM世界耐久選手権 第3戦 “コカ・コーラ”鈴鹿8時間耐久ロードレース第46回大会 YRTが217周を走破して2位表彰台、YARTは2度の転倒でリタイア
2025年8月1日(金)〜3日(日)、三重県・鈴鹿サーキットで2025 FIM世界耐久選手権 第3戦 “コカ・コーラ”鈴鹿8時間耐久ロードレースが開催され、「YAMAHA RACING TEAM(YRT)」は総合2位、同選手権にフル参戦中の「YAMALUBE YART YAMAHA EWC Official Team(YART)」は2度の転倒によりリタイアとなりました。
6年ぶりに鈴鹿8耐にファクトリー体制で参戦するYRTは、全日本ロードレース選手権のJSB1000でポイントリーダーに立つ中須賀克行選手、MotoGPを戦うジャック・ミラー選手、スーパーバイク世界選手権に出場するアンドレア・ロカテッリ選手の3人。そしてマシンは、1999年に発売した市販レーシングマシン「YZF-R7」のホワイト&レッドを基調にしてカラーリングを現代風に再現した「YZF-R1」。さらにこのカラリーングに合わせてライダーのツナギなどもホワイト&レッドに統一しました。
また、同選手権にレギュラー参戦する「YAMALUBE YART YAMAHA EWC Official Team(YART)」も、同様の「YZF-R1」で、ライダーのマービン・フリッツ選手、カレル・ハニカ選手、ジェイソン・オハロラン選手とも、赤と白を基調したツナギを着用しました。
8月1日の公式予選では、その2回目にYRTのミラー選手が第1コーナーで転倒するも怪我はなく、中須賀選手、ミラー選手、ロカテッリ選手ともに2分5秒台の好タイムを記録してTOP10トライアルに進出しました。
YARTも、フリッツ選手が2分5秒台、ハニカ選手とオハロラン選手は2分6秒台で、こちらもTOP10トライアルへの進出を決めました。
8月2日のTOP10トライアルには、YRTからミラー選手とロカテッリ選手が、YARTからはフリッツ選手とハニカ選手が出走。そしてYRTは、ロカテッリ選手のタイムによりセカンドグリッドを獲得。YARTは、フリッツ選手が2分5秒729の好タイムを記録するが、6番グリッドからのスタートとなりました。
8月3日の決勝では、レース前半でYRTが2番手、YARTが3番手を走行するシーンもありましたが、YARTはオハロラン選手がシケインで転倒。さらにスタートから4時間を経過して、今度はハニカ選手がシケインで転倒を喫すると、111周を走破したところでリタイアとなりました。
一方のYRTは終始2番手を走行。レース終盤で、セーフティーカーが介入するシーンが2度あり、トップとの差を縮めることができ、一時はピットインのタイミングの違いでトップに立つこともあったものの、集団の中でコンスタントにペースを上げることができず。最終的にHonda HRCと同一の217周を走破しましたが、34.243差で2位となりました。なお、ロカテッリ選手が190周目にマークした2分6秒604がレース中のベストラップとなっています。
YAMAHA RACING TEAM:2位(217周/8:01.00.823)
中須賀克行選手
「2位という成績は、ライダーもチームスタッフも、各々の役目を理解しながら全員がベストを尽くし、ポテンシャルを発揮しての結果です。やれるだけやってライバルに届かなかった、という事実をしっかり受け入れなければならないと思っています。とは言え、6年ぶりの参戦でここまでやれたのはポジティブなことですし、ライバルとの差や自分たちの強み、改善しなければならない点もはっきりしました。そういう意味でも、価値ある1戦だったのではないかと思います。チームメイトのふたりには感謝しています。短期間で、なおかつ事前テストも1回しかできなかった中で、素晴らしいレベルまで引き上げてくれました。今回はふたりに表彰台まで連れてきてもらった感じがありますし、自分がもう少しペースを作れればまた違う結果になったかな、という悔しさもありますが、これもまた、間違いなく次につながるいい経験になりました。2週間後には、もてぎで全日本ロードが行われます。暑い中での戦いを経て、ポジティブな面も課題も見つかっています。全日本でもしっかりと自分の力を出し切れるよう、準備して臨みます」
ジャック・ミラー選手
「もちろん勝ちたかったけど、ライバルも強かったね。だけど、2位もナイスだ。僕にとっても中須賀さんにとってもロカテッリにとっても、すごくいい日になったよ。めちゃくちゃ暑くて難しいコンディションだったけど、僕たちはほとんどミスなくレースをマネージメントできた。それでもライバルに届かなかったんだから、もっと強くならなくちゃいけないし、もっと速さも必要だ。それらを手に入れて鈴鹿8耐に戻ってきて、勝たないとね。鈴鹿8耐の参戦は2度目で、表彰台に立つことができた。素晴らしい眺めだったよ! 何度も経験している中須賀さんに聞いてはいたけど、本当に美しかった。……だけど、僕が欲しいのはもっとデカいヤツ……優勝のトロフィーだ。アレは、すごくうらやましかったよ(笑)。ヤマハの一員として鈴鹿8耐に参戦できたのは、本当に素晴らしい経験になった。常に進化を求め続けるヤマハのフィロソフィーを感じることができたんだ。今日は設楽社長も来てくれて、光栄だった。スタッフの仕事ぶりも見事だったし、ファンも温かく迎えてくれた。次もぜひヤマハ・ライダーとして鈴鹿8耐に参戦して、あのデカいトロフィーを手にしたいね」
アンドレア・ロカテッリ選手
「とにかく暑くて大変なウィークだったけど、僕もジャックも中須賀さんも、全員がベストを尽くしたよ。ヤマハ・ファミリーの一員として鈴鹿8耐の表彰台に立てたことを、心から誇りに思う。たくさんのスタッフのサポートに感謝している。2位になれたし、コースレコードも更新できた。少なくとも向こう1年間は僕の名前が残るんだから、素晴らしいことだよね(笑)。TOP10トライアルでももう少しで記録を残せたのに、惜しかったなあ。鈴鹿8耐はすべてが最高だったよ! 日本で過ごしたこのレースウィークは最高だった。コースは素晴らしいし、日本のファンの皆さんが作り出す雰囲気は最高だったね。日本でのレースは、モビリティリゾートもてぎでの日本GPの経験があるけど、鈴鹿8耐はスペシャルだ。暗くなってから観客席にたくさんの青い光を見た時は、何とも説明できない気持ちになった。本当に、うまく言葉にできないんだよ(笑)。人生のベストメモリーになったことは間違いないんだけど、表現できないほど感動しているんだと思う。何日か経って、写真をたくさん眺めたりすれば自分に何が起きたのか理解できるだろうけど、今は説明できないんだ。今回の経験は、スーパーバイク世界選手権にも確実に生きるよ。僕は、人生は学びの連続だと思っている。どんなことからも何かを学び取って、レースに生かす。それが僕のやり方なんだ。僕たちはプロフェッショナルライダーで、いろんなことを経験できる立場にある。鈴鹿8耐もそのひとつ。この経験を確実に生かして、さらにステップアップするつもりだ。これは、あらゆる状況に打ち克って勝つために必要なことだからね。……だから、また鈴鹿8耐に参戦したいんだ。勝って、ステップアップした自分を証明するためにね!」
吉川和多留監督
「喜び半分、悔しさ半分というのが正直なところですね。ライダーもチームスタッフも、今、自分たちができるベストを尽くしたことは間違いありません。そこは全員に関して誇りに思いますし、本当にいいレースをしてくれたと思っています。ライダーについては、MotoGP、スーパーバイク世界選手権、そして全日本ロードレースでトップを張る才能の持ち主を集めたので、当初はどうなることかと思いました。しかし事前テストが1回だけだったにもかかわらず、それぞれがしっかりと役割を認識して、素晴らしいチームになったと思います。やっぱりワールドクラスのライダーは凄い! ライディングのレベルは言うまでもありませんが、何よりもみんな勝つために一生懸命なんですよ。勝利に対してとことん貪欲で、細かいことまで見逃さず、いろんなアイデアを提案してくれる。今回、ライダーたちに助けられた面はかなりあったと思います。また、チームスタッフもいい仕事をしてくれました。ピットワークはもちろん、マシン作りやさまざまなサポートを含め、6年間のブランクを感じさせないレベルでした。ただ、ライバルとの間に結果以上の差を感じたのも確かです。“あの強力なライバルに対して本気で勝ちに行くなら、今からでも次に向けての準備をしてもっとレベルアップしなければ”という気持ちです」
小野哲(MS統括部 MS戦略部長)
「今回の鈴鹿8耐はMS戦略部だけではなく、創立70周年ということもあり、さまざまな部門と協力し新入社員を含めた650人の従業員が応援に駆けつけました。まさに当社が一致団結して戦った鈴鹿8耐であり、当社のレースに向けた情熱を十分に感じていただけたと思います。
ライダーは日本の中須賀選手をはじめ、MotoGPのミラー選手、スーパーバイクのロカテッリ選手というオールスターで挑みました。TOP10トライアルではいろんなドラマがあり、決勝ではライバルと真正面からぶつかり合い、互いにミスなくエキサイティングな戦いができました。勝ち切れなかったのは残念ですが、力を出し切ったので、ファンの皆さんには楽しんでいただけたと思います。
そしてライダーたちは、今後も続いていくシーズンの中で鈴鹿8耐の経験を糧にさらに上を目指してくれることと思いますし、我々もこの悔しさをバネにモチベーションを高く持ってファンの皆さんに感動を届けていきたいと思います。最後に多くのご声援、ありがとうございました。心より感謝いたします」
福島造(レース車両開発プロジェクトリーダー)
「今年のR1は2019年の鈴鹿8耐と比較し、予選タイムを見ていただければわかる通り、ロカテッリ選手が4秒台前半と明らかな進化をみせてくれました。それを踏まえて今回の結果は、自分たちが想定していたレースに対してミスなく運営できたのは確かです。一方で、6年ぶりに出場した耐久レースの戦い方、耐久仕様のバイクとしてのラップタイム、燃費などの作り込みについては課題が見えました。
レースは継続し、さまざまなものを蓄積しながらバイクだけでなく我々自体も進化していくものなので、今後もやっていくということであれば、全日本も含めた準備段階からの経験を活かしもう一つ上の成績を目指して準備していきたいと思います。
2位という結果については、上が見えているだけに残念ですが、自分たちが全力を出し切ったという部分では悔いはありません。たくさんの応援、ありがとうございました」
YAMALUBE YART YAMAHA EWC Official Team:DNF(111周)
マービン・フリッツ選手
「スタートもスティントも良かった中、ポイント獲得が目的だったので、良いリズムでプッシュしてミスしたりしないように気をつけていたんだ。EWCのライバルとのギャップを広げることができ、中須賀選手とは2〜3秒差で順調で表彰台も狙える位置でした。でも、転倒がなければ最終的には7〜9位で挽回できたと思うし、ランキングにとっても良かったと思う。ただ残念ながら、テクニカルトラブルでカレル選手がクラッシュしかかとを痛めてしまったんだ。でも、それが現実。私たちはすでにボルドールのことを考えているし、チャンピオンを目指して戦うだけだ」
カレル・ハニカ選手
「もちろん残念な結果。表彰台を争うためにここに来たし、最初の2スティントでそれを証明できた。しかし残念ながら、ジェイソンは最終シケインでフロントを失って転倒。あのコーナーは本当にトリッキーなので、こういうことはよくあること。少し遅れていたが、このレースは長いので、ポイント獲得に向けて全力で戦っていたし、実際に15ポジション挽回できたので、10ポイント以上は確実に獲得できたはずだった。これはランキングにとって非常に重要なポイントだったはず。最後となったスティントはパフォーマンスにも満足していたんだ。でも残り2、3周のところでテクニカルトラブルによってクラッシュしてしまった。本当に残念だけど、レースではこういうこともある。6大会連続で表彰台を獲得できたので、文句を言うことはないし、今はボルドールで新たなスタートを切る必要がある。もっと強くなって最終ラップまでチャンピオンシップを争うよ」
ジェイソン・オハロラン選手
「レースを完走できなかったのは本当に残念。最初のスティントは順調だったけど、最後のシケインでクラッシュしてしまった。前にバイクが何台かいて、少しペースが落ちてフロントタイヤに荷重が少しかかりすぎたのかもしれない。フロントのグリップを失ってしまったんだ。ラップタイムはかなり速く、フィーリングも良かっただけに残念。これでピットインしなければならないトラブルが発生したんだ。そして今度はカレルが2回目の走行終盤にテクニカルトラブルでクラッシュに見舞われた。レースには運と不運があるもので、それを機にすることなく次のレースへと進むしかないんだ。まだ24時間レースが残っているので、どうなるかはまだわからないね」
マンディ・カインツ監督
「鈴鹿8耐をこのような形で終えるのは非常に残念だね。週末を通じて、ライダーとチームは素晴らしいパフォーマンスを発揮し、このレースに力強いペースで臨むことができていた。最初の転倒で貴重な時間を失ったが、マービンとカレルがしっかりと挽回してくれたけど、その後、カレルも別の技術的な問題でクラッシュしてしまった。この問題は修復できなかった。カレルは右の踵を強く打ち付け、激しい痛みがあった。チームとしては彼の早期回復を願っている。鈴鹿は常に難しいコース。当然ながら、今日のレースがこのような展開になることは予想していなかった。9月のボルドールでタイトル争いを続けるため、来年、日本のファンたちの前で強さを発揮するため、もっと力をつけたいと思う」
正式決勝結果